身近な川の生きものを通して環境や命の尊さを学ぶ

はじめに

水みらいプロジェクト2021では、約7ヵ月の期間、県下の小学校3校が「チャレンジ!学校水族館」の企画に取り組みました。
校下の川で採集した生きものの飼育・観察を通して、参加した小学生は、生物多様性の大切さを知り、好ましい環境を守り未来に残したいと望むようになりました。
その姿はテレビの特別番組で放映され、こうした野外での体験教育を活発にする重要性が確認されました。
本プロジェクトを支え成功に導いてくださった参加各校の先生方、保護者をはじめ、魚津水族館・立山カルデラ砂防博物館・富山県中央植物園・国土交通省や県・市町の職員など、多くの方々に対し、深い感謝の意を込めてこの記録集をお届けします。
あわせて今後も一層のご協力ご支援をよろしくお願いいたします。

水みらいプロジェクト2021実行委員長 
竹内 章

東加積小学校

東加積小学校の近くを流れる上市川の支流・郷川。
身近な川の生きものについて学ぶ学校水族館づくりに4年生9人の児童達がチャレンジしました。
上級生から、代々受け継がれてきた学校水族館。
地域に住む生きものや自然の大切さを学びました。

生きもの採取

学校水族館で飼育する生きものを採取するため、校舎近くを流れる「郷川」にやってきました。
魚津水族館の不破さんと斎藤さんにサポートしてもらいながら川の生きものを捕まえます。
教えてもらった捕まえ方でどんどん生きものを採取します。
この日捕れたのはアブラハヤ・タカハヤ・ドジョウなど10種類以上。身近な川に色々な種類の生きものがいることを、発見しました。

4年生
オニヤンマのヤゴみたいなのが捕れた!
魚津水族館 不破 光大 学芸員
おしい!コヤマトンボだな。
淡水魚自体がすごく身近な存在だと思うんですよ。学校でずっと飼育してて、今やってる子も4月からずっと担当してるそうなので、これから先は自分たちで捕った魚を飼育するっていう目線になります。
この環境を見ながら、「いやもっと流れてたよね」とか、「いやもっと草生えてたよね」とかいろんな環境を思いながら飼育出来ると思うので、こういう体験が役立つと思います。
4年生
でかい!でかい!でかい!
魚津水族館 齋藤 真里 飼育員
ヌマチチブっていうお魚です。こんなところに上がるんですね。
4年生
カニさん!カニさん!これ一番のボスじゃない?
魚津水族館 不破 光大 学芸員
水族館日誌を続けてください。観察して記録してください。
持ってきたばかりの魚はエサを食べなかったりするのね。でもあげてから何日かしたらエサを食べだすと思うんだけど、どのエサが好きかとか記録していって下さい!

魚津水族館 飼育見学会

生きものの採取から、2か月。この日は、飼育方法や、展示方法を学ぶため、学校を飛び出し魚津水族館にやってきました。
水族館の舞台裏を見学した児童たち。
実際の飼育方法や展示方法を学び、学校水族館作りの参考になったようです。

4年生
魚の体の見方とか、色々、大変な事などを聞きました。
4年生
一番最初に見た、富山の河川の上流コーナーと下流コーナーが印象に残りました。
どう展示すれば良いかがよく分かりました。

引継ぎ式

魚頭水族館の見学から3か月。この日は、学校水族館を次の学年に送る、引継ぎ式が行われます。
不破さんとの約束を守り、毎日観察日誌を付けてきた児童たち。
水族館で学んだ展示方法も活かしていました。
生きものを観察し、育ててきた5か月間。その経験をクイズや劇にして下級生に伝えました。

下級生
私も3年生になったら魚を育ててみたいです。
4年生
みんなと協力してクイズやパネルなどできて良かったです。
4年生
魚の事をもっと知りたいという気持ちになったのでよかったです。
中川 重徳 教諭
新しく魚を捕まえに行った後も、大変前向きに楽しそうにしていますが、やっぱりそれを続けるのは、なかなか苦しさもあり、楽しさだけではない。
それを通して自然を大切にしていかなきゃいけないという気持ちが芽生えたんじゃないかなと思ってます。

神通碧小学校

挑戦するのは、4年生の児童達。
川に入って生きものを捕まえるのは初めての経験です。
学校水族館を通して飼育の難しさや命の尊さ、暮らしやすい環境を作ることの大切さを知った子どもたち。
身近な川から、様々なことを学びました。

生きもの採取

富山市猪谷の「常虹の滝」から流れる猪谷川と、神通川の合流地点で生きものを採取する不破さんの姿がありました。
学校水族館にチャレンジする神通碧小学校の生きもの採取に向けて下見に訪れた不破さん。水の流れや、川底の形状を入念に確かめていました。
下見から一ヶ月。いよいよ学校水族館作りスタートです。入念に準備をして、猪谷川に向かいます。

魚津水族館 不破 光大 学芸員
ちょっとサバイバルです。足元気をつけてね。
今日は、こういう魚を捕るためのワナ。これにエサを入れてこのままドボンっと沈めたら、この中に魚が入ると出られなくなるという装置です。これを沈めてからみんなで採取しましょう。
ワナを引き上げる児童達
わ~!入っとった!やっぱり奥がいいんだ!おおおおお!
ヨシノボリ!カワヨシノボリと!まだいた!?
4年生
楽しかったです!
4年生
大きくなるまで育てたいです。
金戸 輝 教諭
より一層イキイキしているような感じがして、見ていてとても私も楽しかったです。
命の大切さだったり育てる難しさとかを最終的には学べたらいいかなと思っております。
4年生の児童達
おった!!!でた?あっ!かわいい!
魚津水族館 不破 光大 学芸員
どの魚がどれだけエサを食べたかとか、今日の温度は何度かなとか全部記録していくのね。
そしたら例えば調子が悪くなった時にいつから調子悪いかなとか、調子悪いときの水温何度だったかなとかって目安になるから。
みんなも日誌を作って記録をつけて下さい。

飼育のアドバイス

生きものの採取から4か月。
この日は、魚津水族館の不破さんを招いて飼育に関するアドバイスをもらいました。

4年生
水の温度は今は低めだけど大丈夫なんですか。
魚津水族館 不破 光大 学芸員
何月何日に何℃でしたとグラフにしてみようか。
どの時期にたくさん食べてたというのもその中に入れてってみる。季節によってどう変わってくるか。
温度の記録を並べるだけでも何か見えてくるかもね。
4年生
知らないことがいっぱい知れて嬉しかったです。
4年生
もっとたくさん観察して、もっときれいな学校水族館にしたいです。
金戸 輝 教諭
カワヨシノボリが初めに死んでしまって、その後にどうしたら魚が長生きするのかなっていうことをみんなで考えました。
水が汚いと魚は住みずらいなっていう話になり、水の事について調べたりエサの工夫だったり、行動がみられているのでとてもいいなって思いました。

学習発表会

生きもの採取から5か月が過ぎたこの日、学校水族館を通して学んだことを発表する学習発表会が行われました。

4年生
カワヨシノボリが死んでしまって、命を育てる大切さに気づかされました。
4年生
魚が住みやすい環境を作ろうと思いました。なので川や海にゴミや油を流さないようにしたいです。
保護者
自分たちで考えたり調べたりして学んでいたので、すごく良かったと思います。
保護者
命に対して、大人よりも真摯に考えているなっていうのを感じられたので、そういうところが良かったなと思います。

三郷小学校

5年生の児童がビオトープ作りに挑戦しました。
2022年の4月に、同じ地区の上条小学校と合併することになった三郷小学校。上条小学校の児童を迎え入れるにあたり、「草で覆われたビオトープをキレイにしよう!」という思いで取り組みました。

ビオトープの掃除

ビオトープの中の魚を回収しながら余分な草や土を取り除きます。
開始からおよそ1時間でこんなに綺麗になりました。回収した生きものを、再びビオトープに放流します。

4年生
新しい三郷地域の生きものをもっと知ってもらいたいなと思っています。
杉田 直人 教諭
今住んでる生きもの達がちょっと草ボーボーで苦しそうだという話になって、みんなでやろうということになりました。
さらに三郷地域の生きものを入れたいなぁということで、より、レベルアップしたビオトープにしたいという願いでやっています。

生きもの採取

ビオトープの掃除から2週間。よりレベルアップしたビオトープにするため三郷地域の生きものを集めます。
新しい生きものを捕まえるために学校の近くを流れる用水にやって来ました。
魚津水族館の不破さんからレクチャーを受け、生きもの採取スタート。 およそ1時間で色々な生きものを捕まえました。学校の水槽で飼育し、生態を観察した後、ビオトープに放流します。

魚津水族館 不破 光大 学芸員
なるべくね、隠れ家が多い所がいいよ。草の陰とか、こういう石の下とか…。
5年生
ザリガニ捕ったぞ!

お披露目会

生きものの採取から1か月。飼育している生きものを下級生に紹介するお披露目会が行われました。
「飼育」や「生態」に関する説明の他、魚すくいや、エサやり体験など楽しませる工夫も満載です。

5年生
みんな楽しそうにやっていたので、苦労した甲斐があって嬉しかったです。
5年生
掃除は一番大変だったので、また頑張っていきたいと思います。

飼育相談会

生きものの採取から3か月。魚津水族館の不破さんと中央植物園の中田さんを学校に招き、ビオトープで生きものを飼育する時の注意点などを質問しました。

5年生
今、エサにサキイカをあげているんですけど、あげすぎたら腐っちゃって。
魚津水族館 不破 光大 学芸員
水族館ではサキイカは使いません。僕らは自然界をお手本にするので、もしサキイカを食べているザリガニがいたとしたら、ちょっと不自然だよね。エサやりも考えなきゃいけないよね。エサやりが正しい事がどうか。
富山県中央植物園 中川 政司 園長
「マツモ」といいます。このまま水の上にプカプカ浮いて、先がどんどん伸びて増えるんですね。
これを入れると他に食べるものが無くなったら、この柔らかいところをつまんでエサにしてるんじゃないかなと思うんですね。使ってみて下さい。
5年生
ビオトープの中で生きものたちが快適に過ごせるようになったらいいなと思います。
富山県中央植物園 中川 政司 園長
水草は水面に浮いてるので、ドジョウが下で暴れても影響がないですね。小さな魚はエサとして食べるでしょうし、ある程度繁茂すると日陰を作って魚の住処にもなる。
ひょっとしたら食べられてしまう可能性もあるので、その辺は、どんな風にこれから変わるか注目して見ていってもらったらいいかな。

工作

ビオトープに生きものを放流するまであと、一か月。児童たち、何やら真剣な表情で工作しています。レベルアップしたビオトープをみんなに見てもらうために色々な工夫を凝らすようです。

5年生
鯉とタモの子のミニチュアを一緒に作っています。皆に生きものを知ってもらいたいなという思いでやっています。
5年生
ビオトープにいる生きものの紹介の紙を作っています。全校の人に伝わりやすいので描いています。

ビオトープに放流

生きものの採取から5か月。いよいよ水槽で飼育してきた生きものをビオトープに放流する日がやってきました。
また、4月から合併する上条小学校の児童にもこれまでの取り組みを知ってもらいたいと考えた、三郷小学校の児童たち。
ビオトープのミニチュアや、情報発信コーナーを作り新しい仲間を待っています。

5年生
今まで大切に水槽で育ててきた生きもの達を今度はビオトープで育てることになります。ビオトープでも大切に育てていきましょう。
5年生
5ケ月間育ててきたら放したくなくなりました。ずっと水槽で飼いたくなってきました。
杉田 直人 教諭
来年、三郷小学校と上条小学校が合体して三成小学校になります。両校の児童達と協力して、三成水族館というこのビオトープを管理していき、二つの学校の懸け橋になって繋がっていけばいいなと思っています。